あそこの謎

●原案全文掲載●

えー、それでは、講義を始める。

今日は「こそあど言葉」について。
これは5W2Hすべてにあてはまるものです。

こそあどの違いは指示の方向性。
「こ」(近称)は手の届く範囲で下90度
「そ」(中称)は届きそうで届かない下方45度。
「あ」(遠称)は遠く水平0度
「ど」(不定称)は行方不明で疑問形。

まず、なぜ(Why)や、何を(What)は、
「こそあど」の後に「の」をつけて連体詞として、
その後に代名詞を付け加えるか、
「れ」をつけてそのまま代名詞として用います。

誰が(Who)は人代名詞や人称代名詞。
「こそあど」の後に「いつ」をつけるか、
「の」をつけてさらにその後に代名詞。

何時<いつ>(When)も連体詞で、「の」に続けて
時間を表す「年・月・日・時(とき)」を加える。

いくつ(How many)も連体詞。
「のくらい」「れだけ」「んなに」などをつける。

と、ここまでは「こそあど」4文字すべて
同じように処理が可能だ。

どうした(How)の場合はどうか。
これは副詞で、
「こうした」「そうした」「ああした」「どうした」
となる。
他の「こうする」「こうなる」「こうなった」も同じ。

こ・そ・どは「うした」なのに、あだけは「あした」となる。
これはなぜか。
答えは単純。文部科学省の要録の不備なのだ。
「こう」ではなく語尾を延ばす「こー」が正しい。
「こーした」「そーした」「あーした」「どーした」
これで、「こそあど」4つとも同じ処理になる。

問題は、何処(Where)と言う指示代名詞である。

「ここ」「そこ」「あそこ」「どこ」
お気付きのように、「あ」は「あこ」ではなく、
「あそこ」なのだ。

おかしいではないか。
なぜ、「あこ」でなく「あそこ」なのか。

そこで言葉の変遷を調べてみる。
元々の場所を表す言い方は、
此方(こちら)其方(そちら)である。
これなら「あちら」なので不自然はない。
これが訛った「こっち」「あっち」と言う示し方もうなずける。
これらは「向き」を示すと言う人もいるが
指などで指し示さない限り方向は伝わらない。
だからこれらは場所を示す指示代名詞なのだ。

では「ここ」「そこ」は何処からきたのか。
これである。「何処」(いずこ)。

場所を尋ねる「いずこ」に対して
返す指示代名詞にあてがわれた言葉が
此処(ここ)、其処(そこ)であり、
やがて「いずこ」も「こそあど」に組み込まれ
何処(どこ)と読み替えられた。

場所を尋ねたのに対し、「ここ」「そこ」と、
近称・中称で断定するのは良いが、
遠称で答えては正確な場所を特定できず、
わからないのと同じである。
だから「あこ」は存在しない。
その代わり、遠称を断定するために、
「こそあど」の遠称である「あ」を中称の「そこ」に加えて、
「あそこ」と言う表現を用いたらしいのである。
これなら明確に場所を特定しながらも、
「そこ」より遠くを示すことを伝えられるからだ。

と言っても、これは括弧たる証拠のある話ではなく、
変遷からの推測に過ぎないと言うことを付け加えておきたい。

いずれにしても「あそこ」は
遠かったり見えない場所でありながら、
明確な場所を示す特殊な言葉であり、
時に符丁として使われる面白い言葉なのである。

これを機に更なる探求を試みても良いのではないだろうか。

では、今日はこれまで。

               (終わり)

この文章はfictionです。
(12/27/2002)